富士山周辺の季節の変わり目の届け方

空狭しと連なる山々が、透き通った冷ややかな空気とは真逆の赤と黄色の暖かい彩りとなるこの時期、山梨県内のTVや新聞等、各メディアが頻りに気にしていることがある。それは何か?・・・・・簡単である。季節は「秋」真っ只中ということで、やはり「紅葉」・・・・・ではないのだ。いや、もちろん「紅葉」も季節のニュースとしてはずせないのだが、それは全国的に言えることであるので「山梨県内の」という部分で今回の場合はハズレとしよう。正解は山梨県が「必ず全国ニュースになる日」である「富士山の初冠雪」だ。毎年大体どのTV局でも夕方のニュースの項目には入っていて、それを見て知る人も多いはずだ。だが、実際は「初冠雪」のニュースよりも前に、山頂が白くなっていることがあるのをご存じだろうか。それが富士五湖地域の住人にはお馴染みの「富士山の初雪化粧」というものである。

初冠雪の定義

「初冠雪」とは、甲府地方気象台が発表する正式な宣言のことを指す。定義としては「対象とする山の一部が雪等の固形降水により白くなった状態が初めて見えたとき」としている。
甲府地方気象台では、富士山と甲斐駒ケ岳について観測を行っている。1981年から昨年2016年までの観測データで言うと、初冠雪の平年値は9月30日。最も早い年は2008年の8月9日で、最も遅い年は昨年2016年の10月26日だそうだ。(余談だが、上の写真は最も遅かった昨年の10月26日に、富士河口湖町の河口湖湖畔(長崎公園)で撮影したものだ)

早い年と遅い年で2カ月半もの振り幅があることからみても、予想するのが難しいことは言うまでもない。よく「9月の半ば頃に観光でそっち(富士五湖地方)行こうと考えているのだが、富士山は雪をかぶっているのか?」というお問い合わせをいただいた際、無責任なことも言えないので「例年ですと9月下旬から10月上旬にかけてですね。」と回答するしかないのが正直なところである。

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富士山頂での観測の歴史

少々話が脱線したが、「初雪化粧」の話に戻るとしよう。「何が違うの?」率直な感想はこれである。私自身も長らく「言い方の違い」という理解でいた。言うなれば某有名ファーストフード店の呼称を西と東で「マクド」と「マック」という、同じものではあるが呼び方が違う地域性のようなものだと思っていた。だが、そうではなかった。遡ることおよそ80年。1936年に「中央気象台臨時気象観測所」が日本最高峰の剣ヶ峰に移設され、新たに「中央気象台富士山頂観測所」となり統計を始めたとされている。(余談だが当時の富士山測候所は、1959年に伊勢湾台風という死者行方不明者5000名にも及んだ大災害を受け、台風被害の予防策として、1964年には「富士山レーダー」が設置される等、防災の面でも重要な測候所となっていた)

1936年からの観測史上、最も早い「初雪」は1963年の7月31日とのことだ。学生達の夏休みが始まったばかりの時期に初雪。何とも不思議な感覚を覚える。・・・おや?と感じた方は、このダラダラと長い文章をしっかりと読んでくれている証拠だ。先程最も早い初冠雪は2008年の8月9日と伝えたばかりだが、ここで注意してほしいのが、「中央気象台臨時気象観測所」が統計を始めたのが「初冠雪」ではなく「初雪」であることだ。最も早い「初冠雪」が2008年の8月9日、最も早い「初雪」が1963年の7月31日というように、この2つは似て非なる物であり、そこに「初冠雪」と「初雪化粧」の違いのルーツが垣間見える。

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「初冠雪」と「初雪化粧」

気象衛星の発達や、長野県の「車山気象レーダー観測所」や静岡県の「牧の原気象レーダー観測所」が設置されたことにより、1999年11月1日「富士山レーダー」がその役目を終えた。また、観測装置自体が時代の流れと共に進化していき、現地の人手による観測の必要性を失い、「中央気象台臨時気象観測所」は、自動観測装置が導入された2004年、奇しくも「初冠雪」の平年値と同じ9月30日付で無人化され、富士山頂での有人観測の歴史に幕を下ろすことになった。廃止された富士山気象レーダーは、現在「道の駅富士吉田」に隣接する「富士山レーダードーム館」に展示されていて、人気の観光スポットとなっている。
同じような流れの中で、河口湖測候所も2003年に無人化され、それ以降は現在に至るまで富士山の「初冠雪」発表は甲府地方気象台に一元化されている。ここで、記事の冒頭に戻ってもらいたい。初冠雪の定義は「対象とする山の一部が雪等の固形降水により白くなった状態が初めて見えたとき」とお伝えした。「見えたとき」・・・・そこにミソがある。「見えたとき」と聞いて、普通は、初冠雪のタイミングを逃さぬよう「どこか山頂がよく見える所に設置された性能のいい望遠のカメラか何かで見えたとき」とイメージすると思うが、全く違う。目視で見えた時なのである。もう一度言う。「目視」なのだ。甲府地方気象台から富士山まではおよそ40kmはある。これで感のいい人ならば気づいたかもしれないが、甲府から眺める富士山と富士山の麓で見る富士山。この見方の違いが「初冠雪」と「初雪化粧」の違いなのだ。当然、富士山の麓で山頂が見えていたとしても、雲がかかって甲府からは見えなかったりする。その場合、現地では冠雪が確認できるのに、正式な「初冠雪」の発表はされないのだ。それにもどかしさを覚えたのかどうかは分からないが、富士吉田市では、2006年より季節の移り変わりのお知らせとして独自に観測を発表している。それが「富士山初雪化粧宣言」なのだ。こちらも同じく富士山課職員による「目視」なのだが、富士山の麓であるため、甲府地方気象台よりも見える確率は高い。(一概には言えないが)
ちなみに昨年の「初雪化粧宣言」は9月25日。「初冠雪」よりも1カ月も早く、山頂は白く染まっていた。

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来年の初冠雪を宣言するのはあなたかも?

整理すると、
初雪・・・・・観測所で計測された日。
初冠雪・・・・甲府地方気象台より目視で確認できた場合に宣言
初雪化粧・・・富士吉田市役所より目視で確認できた場合に宣言
季節の変わり目の便りとしてどれを選ぶかはあなた次第である。
ちなみに、今年2017年の初冠雪は10月23日、猛威を振るった台風21号が過ぎ去った翌日のことだった。

正に台風一過といった秋晴れの青空だったが、早朝より富士山山頂付近のみ雲に隠れていた。昼に近づくにつれて徐々に雲が少なくなり、10時30分を過ぎた頃にようやく恥ずかしがり屋の富士さんが顔を出してくれた。

分かりづらいが、山頂付近の白い筋のようなものが冠雪部分である。甲府地方気象台も、この日「初冠雪」を宣言した。先程述べたように、「初冠雪」は目視で確認できた場合である。正直なところ、この微妙な冠雪を甲府からよく確認できたと思う。
また、おもしろいことに、地元の富士吉田市で独自に宣言している「初雪化粧」は、職員が肉眼で確認できたものの、「雪がまばらで、お化粧とは言えない」と、この日は見送られた。

SNS普及により世の中の大半が情報発信者と成り得る現代社会において、紅葉スポットなど美しい景色は絶好のネタである。ここ富士五湖地域も「紅葉祭り」など、多くの観光客で賑わうが、折角の旅行なのに雨が降ってしまって残念ということもあるだろう。しかし、もし翌朝雨が上がっていたら、ふと富士山山頂を見上げてもらいたい。そこに、あなただけの富士山初雪化粧宣言が見つかるかもしれない。

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