富士山が世界文化遺産に登録されたことは皆さんご存じかと思いますが、富士五湖の一つである河口湖が世界遺産というのはあまり聞かないですよね。富士山の世界遺産への登録のされ方に、河口湖が世界遺産かどうかの答えが隠されています。
今回は世界遺産富士山の構成資産について解説します。
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河口湖は世界遺産なのか

「河口湖は世界遺産なのか?」という問いに対する答えは「YES」です。ただし、河口湖という湖が一つの世界遺産に認定されているわけではありません。河口湖は、富士山が2013年6月22日に世界遺産登録された際に、その構成資産の一つとして世界遺産になったのです。
では、「構成資産」とは何でしょうか?富士山が世界遺産に登録された時の正式名称は、「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉」といいます。
富士山は、江戸時代の民衆信仰である富士講など古来より山岳信仰の対象になってきたことや、葛飾北斎の「富嶽三十六景」をはじめ国内外多くの芸術作品に影響を与えたことに文化的価値を認められ、世界文化遺産に認定されました。
しかし、信仰や芸術といった観点で価値を見出す場合、富士山の山体だけではなく、遥拝所や富士講の立ち寄り所として利用された山麓の神社や、富士山とともに芸術作品のテーマとなった湖沼なども同様の価値を持つ文化財と言えるため、その価値を証明できる文化資産として構成資産に登録されました。富士五湖はこの構成資産の一つ。つまり、河口湖も世界遺産富士山の一部ということになります。

山梨県にある富士山の構成資産一覧

世界遺産富士山の構成資産は、山梨・静岡両県あわせて25か所あります。一部の湖や登山道は富士山域としてまとめて登録されていて、実際には30か所以上が構成資産に認定されていますよ。
山梨県側にある構成資産は以下の通りです。

〈富士山域〉〈山頂の信仰遺跡群〉〈吉田口登山道〉
〈北口本宮冨士浅間神社〉〈河口浅間神社〉〈冨士御室浅間神社〉
〈山中湖〉〈河口湖〉〈西湖〉〈精進湖〉〈本栖湖〉
〈忍野八海(出口池、お盆池、底抜池、銚子池、湧池、濁池、鏡池、菖蒲池)〉
〈御師住宅(旧外川家住宅、小佐野家住宅)〉
〈船津胎内樹型〉〈吉田胎内樹型〉

まずは富士山世界遺産センターで世界遺産富士山について学ぼう

【富士山世界遺産センターとは】
富士山世界遺産センターは、富士山の世界遺産としての価値を登山者や観光客に伝えるために、2016年にオープンした施設です。富士山の文化的価値を学べる展示が充実した南館と、富士山や周辺の自然を紹介する展示やカフェなどが入った北館に分かれており、どちらも入館無料です。
館内の説明をしてくれるスマホアプリ「ふじめぐり」をインストールすれば、世界遺産富士山についてより深く知ることができますよ。
【大迫力の「富嶽三六〇」】
南館の中央には、和紙で作られた富士山模型「富嶽三六〇」が展示されています。その名の通り360度、館内のどこからでも見ることができる大きな模型です。ライトアップされた姿は美しく、また照明の色や明るさで、1日の時間の流れや四季の移り変わりの様子が表現されているため、いつまでも見ていたくなります。
【名物「青い富士山カレー」を味わおう】
北館2階のカフェでは見た目のインパクトが抜群の「青い富士山カレー」をいただくことができます。真っ青なカレーは、意外にもココナッツ風味の本格的なカレーとなっています。見た目と美味しさに2度驚かされますよ。
展示や食事で富士山を堪能したら、次は構成資産巡りに行きましょう。

河口湖周辺の構成資産を巡ろう!おすすめスポットを紹介

【富士五湖】
河口湖をはじめ、山中湖・西湖・精進湖・本栖湖もすべて富士山の構成資産となっています。富士山を題材とした芸術作品の中には湖に映った逆さ富士を描いているものも多く、また信仰の観点でも、富士講が水行を行う「内八海巡り」の巡礼地になっています。信仰・芸術双方の観点から富士山の文化的価値を証明する湖です。
精進湖の子抱き富士や、1000円札にも描かれている本栖湖からの富士山など、魅力的なフォトスポットがたくさんあります。冬の山中湖はダイヤモンド富士の撮影スポットとして有名です。落ちる太陽が山頂とぴったり重なる幻想的な光景は、一生に一度は見たい絶景です。

山中湖のダイヤモンド富士についてはこちらもチェック!

【忍野八海】
忍野八海は富士山の伏流水が湧き出した8つの湧水池の総称で、池の一つひとつが富士山の構成資産となっています。忍野八海は古くから富士山信仰の巡礼地となっており、修験者たちは富士山登拝の前にこの池の水で体を清めたそうです。
かつて禊の地であったことからパワースポットとして有名な観光地になっていて周辺には食事処やお土産屋も充実しています。1時間ほどで8つの池すべてを巡ることができますので、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
【北口本宮冨士浅間神社】
富士山信仰は、富士山を拝しながら登山する「登拝」という信仰方法が生まれる以前、遠くから富士山を仰ぎ拝む「遥拝」というかたちがとられていました。構成資産の一つである吉田口登山道の起点となっている北口本宮冨士浅間神社は、浅間大神(あさまのおおかみ)を祀る遥拝所を起源としている神社で、本殿などは国指定の重要文化財にもなっています。
荘厳な雰囲気で、参拝すれば当時の修験者の思いを肌で感じることができます。初詣などに訪れてみてはいかがでしょうか。
【冨士御室浅間神社】
冨士御室浅間神社は、かつて富士山中にある最古の神社として、吉田口登山道二合目に9世紀ごろ建立されたと言われています。本殿は移設され、現在は河口湖南岸に建っていますが、長きにわたり修験者や登拝者の拠点となってきた神社です。
神秘的な雰囲気の神社で、春は参道沿いに桜が咲き誇り、とても美しい光景が広がりますよ。秋には紅葉も楽しむことができ、季節ごとに違った顔を見せてくれます。河口湖の湖畔沿いにあるので、一周ドライブなどの際にぜひ立ち寄ってみて下さい。

河口湖のドライブコースについてはこちらもチェック!

【旧外川家住宅(御師住宅)】
御師(おし)とは、富士講の宿坊として食事を提供したり、富士山信仰の布教や祈祷を生業としていた人々のことで、富士山の浅間神社を祀る「御神前の間」など当時の状態を残している御師住宅は、文化的価値の高い建物として構成資産に登録されています。
構成資産に登録されている御師住宅のうち、旧外川家住宅は一般公開されています。(耐震補強工事のため休館:令和6年4月1日~令和8年3月31日)当時の生活風景を垣間見ることができる住宅内部や貴重な古文書を見ることができ、富士講と御師の関わりを学ぶことができる貴重なスポットです。
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もっちー