「子どもを連れて富士山に登れるのだろうか?」
「体力的に大丈夫?高山病は?ルートや装備はどうすればいいの?」
そんな不安や疑問を抱えて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
富士山登山は、日本一の標高を誇る本格的なチャレンジであると同時に、親子の絆を深める最高の思い出づくりの舞台でもあります。
ただし、子どもと一緒に挑戦するには、年齢や体力に応じたルート選び、装備の準備、そして安全対策が欠かせません。
本記事では、実際に多くの家族が実践しているノウハウや注意点をもとに、
「子連れで富士登山にチャレンジしたい」と考えるすべての方に向けて、安心安全な富士登山計画を立てるための総合ガイドをお届けします。

「何歳から登れる?」
「子どものやる気はどう引き出す?」
「どのルートが一番安心?」
「高山病や体調管理のコツは?」
「持ち物や山小屋の予約は?」
こうした疑問を解消しながら、初めてでも安心して富士登山の計画を進められるように、また家族で富士山に「登ってよかった!」と思える富士登山のヒントをご紹介します。
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富士山の基本情報と世界文化遺産としての意義

標高3,776m、日本一高い山として名高い富士山は、毎年数多くの登山者が訪れる国内屈指の観光スポットです。東京など首都圏からアクセスが良く、登山口のある富士山五合目までバスやマイカーで行ける手軽さもあり、初めての登山や子連れ登山にも人気の山となっています。
富士山はその美しい円錐形の姿だけでなく、自然・信仰・文化の側面においても非常に高い価値を持っています。2013年には「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。これは自然遺産ではなく文化遺産としての登録であり、日本人の精神性や芸術、歴史に大きな影響を与えた山であることが評価されたのです。

参考記事「富士山の標高(高さ)は?富士山観光におすすめの周辺施設も紹介!」→

参考記事「河口湖は世界遺産?富士山の構成資産とは」→

富士山が子連れ登山に選ばれる理由

家族での登山において、富士山が選ばれる理由は以下のような点が挙げられます。
・複数のルートがあり、年齢や体力に応じて登山道の選択ができる
・山小屋やトイレなど、登山インフラが比較的整っている
・富士山五合目にはお土産屋やレストランなどがあり、子どもでも楽しみやすい
・登頂すれば日本一の山の頂上に立てるという達成感と自信を得られる

特に、富士山の吉田ルートは登山道と下山道が分かれており、道がわかりやすく混雑していても安心して進めることから、子ども連れにもおすすめされるルートです。
また、御来光を目指しての早朝登山や、山頂での記念撮影、山頂郵便局から家族に手紙を送るなど、子どもにとっても一生の思い出になる体験が待っています。
富士山は決して「気軽に登れる山」ではありませんが、しっかりと準備し、家族で助け合いながら挑めば、親子の絆を深める特別な経験となるでしょう。

子どもは何歳から富士山に登れる?年齢別に考える子連れ登山の目安

富士山は夏休みの親子の思い出づくりにぴったりの舞台ですが、「何歳から登れるのか?」というのは多くの親が気になるポイントです。
結論から言うと、富士登山に年齢制限はありません。ただし、標高が高く体力を要する山であるため、子どもの年齢だけでなく、体力や意思、経験などを含めて総合的に判断する必要があります。

小学生未満(〜6歳):原則おすすめできない

未就学児の場合、歩行距離や標高差に対する耐性が十分ではなく、高山病のリスクも高まります。また、トイレや寒さへの対応力も弱く、登山道での予期せぬトラブルへの対応も難しいため、安全面を考えると富士山登頂は控えた方がよいでしょう。
富士山を身近に感じてもらいたい場合は、五合目周辺の散策や山麓にある富士山関連の博物館の見学などがおすすめです。

参考記事「富士山五合目へ行こう!観光におすすめの吉田口五合目の見所は?」→

小学校低学年(7〜9歳):体力に応じて検討

この年齢になると、体力に個人差はあるものの親のペース管理とサポートがあれば登頂が可能な子も出てきます。登る前には高尾山など近隣の低山での登山経験を積み、長時間歩く練習をしておきましょう。
また、本人が登りたいという意思を持っているかどうかも重要です。無理やり連れて行くのではなく、子ども自身の気持ちを尊重するようにしてください。

小学校高学年(10〜12歳):適切な準備があれば登頂可能

小学校高学年になると、体力・判断力ともに成長し、富士山登頂にチャレンジできる年齢になります。実際に山小屋に宿泊して1泊2日のプランをとることで、負担を分散しながら安全に登りきるケースが増えます。
装備や防寒対策、レインウェアの準備をしっかり行い、トレッキングシューズやザックも子供用サイズでフィットしたものを選びましょう。

中学生以上:大人とほぼ同じ扱いで計画可能

中学生以上であれば、大人と同じ登山計画でも問題ありません。必要な装備やルート情報を共有しながら、一緒にプランを立てることで登山への学びも深まり、達成感を共有する素晴らしい機会になります。
年齢だけで判断するのではなく、子ども一人ひとりの個性と体力、そして気持ちを尊重することが、安全で楽しい富士登山の第一歩です。

子どもの意思確認が大切!登山の動機と心構え

子連れでの富士登山を計画するうえで、もっとも重要なのが「子どもの意思確認」です。親として「家族の思い出をつくりたい」「日本一の山に一緒に登りたい」という気持ちがあっても、子ども本人の気持ちが伴っていなければ、富士登山は思わぬストレスや危険につながります。

参考記事「初心者が富士山に登るには?富士登山に必要な知識や準備を解説」→

「富士山に登りたい」という気持ちがあるかを事前に確認しよう

子どもが「富士山に登りたい」と感じているかどうかを確認することが、安全で前向きな富士登山への第一歩です。周囲に流されて「仕方なく登る」のではなく、自分の意思で挑戦しようという気持ちがあれば、登山中のつらさも乗り越えやすくなります。
親子で写真や動画を見ながら、富士山の魅力や達成感、登山ルートの様子などを共有して、「富士山に登りたい!」というモチベーションを自然に引き出す工夫をしてみましょう。

無理にチャレンジさせるのは逆効果

「せっかくだから富士登山に挑戦させたい」という親心から、子どもの意思を無視して強行するのはやめましょう。標高が高くなるにつれて空気は薄くなり、気温は下がり、体調も崩しやすくなります。
特に子どもは、高山病の症状をうまく言葉で表現できないことがあるため、子どもの意見や状況に耳を傾け、「無理をしない」「疲れたら休む」「途中で下山する」といった柔軟な姿勢を持ちましょう。

親子で心構えを共有しよう

実際の富士登山では、思った以上に体力を消耗し、天候も急変します。出発前に、以下のような心構えを親子で共有しておくことが大切です。
・途中で諦めても良い、無理せず安全第一。
・雨や風など天気が悪ければ引き返す。
・登頂することを目的にせず、家族みんなで安全に帰る。

このような前提をしっかりと共有しておけば、子どもも気負いすぎず楽しい気持ちで富士登山に挑めます。
富士登山は親子の絆を深める素晴らしい機会ですが、その前提には「子ども自身の納得と気持ち」が必要です。

子連れ富士登山のルート選び:4つの主要ルートを徹底比較

富士山には主に4つの登山ルートがあり、それぞれ特徴や難易度、所要時間が異なります。子連れでの富士登山は、ルート選びが成功のカギを握ります。
ここでは「吉田ルート」「富士宮ルート」「須走ルート」「御殿場ルート」の4つについて、子どもと一緒に登る視点から解説していきます。

参考記事「富士山の登山ルート4つと秘密ルート! 魅力や難易度を紹介」→

吉田ルートの特徴と難易度

もっともポピュラーで初心者・子連れ向きなのが「吉田ルート」です。山梨県側の「富士スバルライン五合目」からスタートし、山小屋の数が多く、休憩や宿泊がしやすいのが特徴です。
また、登りと下りの道が分かれているため、人の流れが整理されていて安全に進みやすく、迷子になりにくいという安心感もあり、子ども連れや初心者に最もおすすめのルートです。
・スタート地点:富士スバルライン五合目(標高約2,300m)
・登山距離:約7km
・標高差:約1,470m
・所要時間:登り6〜7時間、下り3〜4時間
・山小屋の数:非常に多い(休憩がしやすい)

富士宮ルートの特徴と難易度

「富士宮ルート」は山頂までの距離が最も短く、最も標高の高い地点から出発できるルートです。静岡県側の「富士宮口五合目(標高約2,400m)」から始まり、標高の変化が急で体力勝負の傾向があります。
岩場や階段状の登山道が多いため、小さなお子さまにはややハードかもしれません。登頂スピードを重視する場合や体力に自信がある中学生以上の子ども連れの親子に向いたルートです。
・スタート地点:富士宮口五合目(標高約2,400m)
・登山距離:約5km
・標高差:約1,300m
・所要時間:登り5〜6時間、下り3〜4時間
・山小屋の数:比較的少ない

須走ルートの特徴と難易度

「須走ルート」は自然豊かな森の中から始まり、混雑を避けたい人に人気のルートです。スタートからしばらくは樹林帯が続き、直射日光を避けながら登れるのが魅力です。
登山道と下山道が一部共通なので、混雑時は注意が必要で、後半は吉田ルートと合流するため、山小屋の選択肢が増えるのも利点です。
自然を感じながらゆったり登りたい家族登山に向いています。
・スタート地点:須走口五合目(標高約2,000m)
・登山距離:約7.8km
・標高差:約1,770m
・所要時間:登り6〜7時間、下り3〜4時間
・山小屋の数:中間レベル

御殿場ルートの特徴と難易度

「御殿場ルート」は最も距離が長く、標高差も大きい上級者向けのルートで、五合目の標高は約1,440mとかなり低いため、山頂との高低差は2,300m超と圧倒的です。
コースが空いているためマイペースで登れる反面、山小屋の数が少なく、休憩ポイントも限られるため、子連れには不向きです。下山時には「大砂走り」と呼ばれる砂地の道が特徴的ですが、足元が不安定で滑りやすく注意が必要です。
体力・経験ともに十分な家族のみが検討すべきルートです。
・スタート地点:御殿場口五合目(標高約1,440m)
・登山距離:約11km
・標高差:約2,300m
・所要時間:登り8〜10時間、下り3〜4時間
・山小屋の数:少ない

ルート選びは、子どもの体力や年齢、登山経験に応じて慎重に行うことが登頂成功のカギとなります。最も人気のある「吉田ルート」をベースに、他の選択肢を比較しながら無理のないプランを立てましょう。

入山規制やマイカー規制

2024年より、山梨県側・静岡県側の全ルートにおいて登山規制を実施しており、登山者の入山登録や山小屋の宿泊予約などが必要となります。
2025年の登山シーズンにおいて、山梨県側の吉田ルートでは、14:00~翌日3:00まで登山道の入口ゲートを閉鎖し、山小屋宿泊者等以外は夜間の通行規制を実施。通行料(入山料)は1人4,000円です。
また、1日の登山者数が4,000人に達した際にも規制がかかりますのでご注意ください。
富士登山を計画されている方は「富士登山オフィシャルサイト」や両県のホームページなどで詳細を確認することをおすすめします。

富士登山オフィシャルサイト「2025年 富士登山をされる全ての方へ」→

参考記事「【富士山入山料】富士登山の料金の総額は?|安くする豆知識も紹介」→

また、御殿場ルートを除く3つのルートでは、例年7月上旬~9月上旬にかけてマイカー規制を実施しており、登山口にある富士山五合目まで車で登ることができなくなります。
山麓の専用の駐車場にマイカーを停め、そこからシャトルバスで五合目を目指すことになるので注意が必要です。

吉田ルートは富士山パーキングを利用

富士スバルラインは富士山麓~吉田ルートの登山口(富士スバルライン五合目)を結ぶ有料道路で、基本的に1年を通して通行することができますが、登山シーズン中はマイカー規制が行われます。
マイカー規制時には、山麓の「富士山パーキング(旧富士北麓駐車場)」が指定駐車場として開放されますので、シャトルバスに乗り換えて富士山五合目を目指してください。

富士山パーキング

  • 住所:山梨県富士吉田市上吉田字剣丸尾5597-84(東富士五湖道路富士吉田IC東隣)
  • TEL:0555-72-9900
  • 施設案内:駐車場(駐車台数1,400台)、観光案内所、トイレ
  • 営業期間:4月1日~11月30日 9:00~17:00
  • ※マイカー規制中は24時間、観光案内所は18:00まで
  • 駐車料金:マイカー規制期間中のみ自動車1台につき1,000円/回(二輪自動車125cc超を含む)
  • WEB:https://www.fujisanparking.jp/

子連れ富士登山ならではの装備と持ち物リスト

富士山は標高が高く、天候も変わりやすいため、装備の準備が安全と快適さを左右します。特に子連れの場合は、大人以上に気を配るポイントが多くなります。
ここでは、登山靴やレインウェア、防寒対策などの基本装備と、安全ギアの2つに分けて、子ども連れ登山に必要な持ち物を解説します。
装備をしっかり揃えることで、子ども自身が安心して登山に集中できる環境を整えることができます。

参考記事「富士山の登山に最適な服装は? 富士登山するなら知っておきたい装備」→

登山靴・レインウェア・防寒対策

登山靴

富士山は砂利や岩が多く、滑りやすい場所もあるため、スニーカーでの登山は絶対にNG。トレッキングシューズ(ミドルカット以上)で、子どもの足に合った子供用サイズを用意しましょう。靴擦れ防止のため、事前に履き慣らしておくことも重要です。

レインウェア

富士山では突然の雨風に襲われることがよくあります。上下セパレートの防水透湿素材のレインウェアは必須です。ポンチョタイプでは風にあおられてしまうため、登山専用のものを選ぶと安心です。

防寒対策

富士山五合目では半袖で快適でも、八合目や山頂は10℃以下になることも。特に夜や早朝は冷え込みが激しいため、フリース・ダウン・インナーなどの重ね着できる防寒着をしっかり準備しましょう。

参考記事「富士山の山頂の気温は夏でも寒い? 知っておきたい富士山の天候」→

ヘルメット・ストック・手袋などの安全ギア

ヘルメット

万が一の転倒や落石に備えて、登山用ヘルメットの着用が推奨されます。特に子どもは足元に気を取られやすくバランスを崩しやすいので、頭を守る装備は重要です。軽量タイプでサイズ調整が可能なものを選びましょう。

トレッキングポール(ストック)

上り坂では体を支え、下りでは膝への負担を軽減する効果があります。子ども用の短めストックもあり、身長に合わせて調整できるタイプが便利です。片手でも使える1本タイプでも十分効果があります。

手袋(グローブ)

登山中は手を岩につくことも多く、滑り止めと手の保護のためにグローブは必須です。軍手では濡れると冷えやすいため、登山用の耐水グローブが望ましいです。

高山病対策と健康管理:子どもの体調を守るために

標高3,000mを超える富士山登山では、高山病のリスクが非常に高まります。子どもは大人よりも体調の変化を言葉で伝えるのが難しいため、事前の対策と登山中のこまめな観察が欠かせません。
ここでは、親子で安全に富士登山を楽しむための高山病対策と健康管理のポイントを紹介します。

高山病とは?子どもは特に注意が必要

高山病は、標高の高い場所に急に行くことで酸素濃度が下がり、体が順応できなくなることで発症します。
主な症状は以下の通りです。
・頭痛
・吐き気や嘔吐
・食欲不振
・めまい
・倦怠感や眠気

子どもの場合、これらをうまく伝えられないことも多く、「疲れた」「寒い」「眠い」といった訴えが初期症状の場合もあります。普段と違う様子が見られたら、すぐに休憩するか下山を検討しましょう。

子連れ登山での高山病対策のポイント

いきなり登らず、五合目でしっかり順応

登山当日は、富士山五合目に1〜2時間ほど滞在して体を慣らす「高度順応」の時間を必ず設けましょう。おやつを食べたり、少し散策したりして過ごすのがおすすめです。

登山のペースはゆっくりとこまめに休憩を

急ぎすぎると呼吸が乱れ、酸素が不足します。「少し物足りない」くらいのペースで、こまめに水分補給と休憩をとることが高山病予防につながります。

睡眠・食事・体調管理を万全に

前日からしっかり寝て、万全の体調で臨むことが何よりの予防策です。子どもは空腹や睡眠不足でも体調を崩しやすいので、登山中もこまめなおやつタイムでエネルギー補給を。

異変があれば「登頂」にこだわらず下山を

高山病の初期症状が出た段階で、決して無理をせず、途中で下山する判断も必要です。子どもの健康が最優先であり、「登ること」より「無事に帰ること」が大切です。
また、山小屋のスタッフやガイドに相談することで、的確な対応をとることも可能です。不安があれば迷わず周囲に助けを求めましょう。
高山病は、準備と心がけ次第で十分にリスクを減らすことができます。体調に気を配りながら、安全で思い出に残る富士登山を楽しみましょう。

事前トレーニングで万全に:親子でできる体力づくり

富士山登頂は決して楽な挑戦ではありません。標高差1,000m以上、6〜10時間に及ぶ長時間の登山に、子どもの体力が耐えられるのか不安に思う方も多いはずです。
しかし、出発までに親子で少しずつ体を慣らすトレーニングを行えば、登山中の疲労やリスクを大幅に減らすことができます。

富士登山に必要な体力とは?

必要なのは「速く走れる脚力」ではなく、長時間歩き続けられる持久力と、登り下りを耐える足腰の強さです。さらに、ザックを背負って動くための背筋や体幹の安定性も重要です。
また、子どもは疲れると機嫌が悪くなったり、集中力が切れやすくなります。途中でぐずらないようにするには、事前の体力づくりが効果的です。

家族でできる登山前トレーニング

近所の丘や階段を使ったウォーキング

自宅近くの公園や坂道を利用して、ザックを背負って30分〜1時間歩く練習から始めましょう。最初は平地からスタートし、徐々に傾斜や段差を取り入れていくと◎。

低山登山で実践的な経験を積む

高尾山(東京都)、金時山(神奈川県)、筑波山(茨城県)などの標高500〜1,200m程度の低山で、1日登山にチャレンジするのがおすすめです。
山小屋やトイレの有無、登山道の様子などを体感することで、親も子も登山に対する理解が深まります。

自宅でできる筋トレやバランス運動

踏み台昇降・スクワット・プランクなど、家の中でもできる軽い筋力トレーニングを取り入れると、登り坂での踏ん張りや、下山時の膝への負担が軽減されます。

トレーニングも「楽しい思い出づくり」の一部として

体力づくりを「トレーニング」と構えすぎる必要はありません。週末の家族ハイキングやお散歩でも、十分効果があります。
「登るための準備」ではなく、「一緒に挑戦を楽しむ時間」として取り組むことで、子どものモチベーションも自然に高まります。
事前の準備は、登山当日の安心感につながります。少しずつ無理なく、親子一緒にできるペースでトレーニングを進めていきましょう。

子連れで山小屋を利用する注意点・予約のポイント

富士登山での宿泊は、山小屋の利用が一般的です。特に子連れの場合は、無理のないスケジュールを組み、山小屋に1泊して登頂を目指すプランが安心です。
しかし、山小屋はホテルとは異なり、設備もルールも独特。親子で快適に過ごすためには、事前の準備と理解が欠かせません。

参考記事「日帰りで富士山を満喫!日帰り登山のポイントやおすすめ富士山観光」→

子ども連れで山小屋を使う際の注意点

音・行動に配慮しよう

山小屋では大勢の登山者が同じ空間で眠るため、静かに過ごすことが求められます。
子どもが騒いだり走り回ったりしないよう、事前に「静かに過ごす時間帯があること」をしっかり伝えておきましょう。

トイレや洗面設備に備える

山小屋のトイレは水洗でない場合も多く、衛生面やにおいが気になることもあります。
ウェットティッシュやトイレットペーパーを多めに持参し、子どもにも使い方を教えておくと安心です。

寝具・防寒対策は万全に

山小屋には布団や寝袋が用意されていますが、子どもにはサイズが合わないことも。
寒さ対策としてダウンやフリースなどを着たまま寝る準備をしておくと安心です。耳栓やアイマスクもあると便利です。

山小屋の予約のポイント

富士登山の成功は、しっかり休める山小屋選びにも左右されます。安心・安全な拠点を確保し、登頂に向けてのコンディションを整えていきましょう。

予約は早めに!特に夏休みや連休は争奪戦

富士山の山小屋は7月〜9月の限られた期間のみ営業しており、特に土日や夏休みはすぐに満室になります。
3ヶ月前〜1ヶ月前には予約を済ませるのが理想的です。

予約時に「子連れ」であることを必ず伝える

山小屋側も事前に情報があると、子ども連れに配慮した部屋配置や説明をしてくれる場合があります。
小学生以下の子どもがいる場合は、年齢・人数・性別も含めて詳細を伝えると安心です。

選ぶ山小屋は「清潔さ・アクセス・設備」で比較

同じルートでも、山小屋によってサービスや設備が異なります。
口コミや登山ブログなどで「子連れでも快適だった」という評判のある山小屋を選ぶとよいでしょう。

夜間登山は避けるべき?メリットとリスクを徹底評価

富士登山といえば、山頂でのご来光を目的とし夜間登山が有名です。夜中に出発して、日の出前に山頂へ到達するスタイルに憧れを抱く方も多いでしょう。
しかし、子ども連れの富士登山では慎重な判断が必要です。ここでは、夜間登山のメリットとリスクを比較しながら、家族での富士登山に適しているのかを解説していきます。

夜間登山のメリット

ご来光を山頂で見られる感動体験

富士山頂でのご来光(御来光)は一生の思い出になる圧巻の風景。達成感と感動は、何にも代えがたいものがあります。

日中の暑さを避けて登れる

真夏の富士山では、日中の直射日光や熱中症のリスクが高まります。夜間に登れば比較的涼しく、体力消耗も少なく済むことがあります。

混雑を避けやすい

登山道の混雑を回避できる時間帯で動けるのも、夜間登山の利点のひとつです(ただし繁忙期は夜間でも混雑する)。

夜間登山のリスクとデメリット

足元が暗く、転倒や道迷いのリスクが高い

ヘッドライトが必須ですが、それでも視界は狭く、子どもが段差につまずいたり滑落する危険性があります。体力が消耗して判断力が低下する時間帯でもあり、事故のリスクは日中より高まります。

高山病の発症率が高くなる傾向がある

夜間登山では、体が高度に順応しづらくなります。その結果、子どもも大人も高山病のリスクが高まるのです。

子どもにとって過酷なスケジュールになりやすい

深夜に起きて登る、寒さに耐える、仮眠ができなかったなどの理由で、子どもの体調や気分に大きな負担をかけます。ぐずりやすくなったり、集中力が切れて危険が増すケースも多く見られます。

子連れ登山では「夜間登山は避けた方が安全」

子ども連れの富士登山では、夜間登山は基本的に避けることをおすすめします。ご来光が見たい場合は、山小屋に1泊して、八合目付近から日の出を見るプランが現実的で安全です。
また、山小屋でしっかり休んでから、翌朝に明るい時間帯での登頂を目指す方法もあります。「ご来光を見せてあげたい」という気持ちは尊いものですが、安全と体調を最優先に、子どもにとって無理のない計画が、思い出深い富士登山体験につながります。

富士登山での子どものモチベーション維持のコツ

富士登山は、親にとっても子どもにとっても大きな挑戦です。長時間歩き続ける中で、「疲れた」「もうやめたい」と感じる瞬間は、誰にでも訪れます。
特に子どもは、体力よりも「気持ち」の浮き沈みに大きく影響されます。そのため、モチベーションを維持できる工夫を用意しておくことが、登頂成功の鍵となります。

小さな目標設定とご褒美アイデア

「あと○分」「あの山小屋まで」などの区切りを作る

長時間の登山は、全体を見通すと気が遠くなることも。そんな時は、下記のような道中で小さなゴールを設定してあげましょう。短期的な目標をクリアしていくことで、達成感を積み重ねられます。
・「あのカーブまで行ったら休憩しよう」
・「次の山小屋までがんばろう」
・「あと30分でおやつタイム」

ご褒美で楽しさをプラス

「頑張ったら楽しいことがある!」と子どもが感じられると、前向きな気持ちを持続しやすくなります。
・お気に入りのお菓子やドリンクを「ここまでがんばったら飲もうね」と決めておく。
・特別なトレッキングシールやワッペンを登山後にプレゼントする。
・山小屋での焼き印入り木札や記念バッジも人気。

焼印集めや山頂郵便局で楽しむ工夫

山小屋ごとに異なる「焼印」を集める

富士山の山小屋では、焼印を押してもらえる金剛杖(木の杖)を販売しています。山小屋ごとに焼印のデザインが違うため、集めながら登ることでゲーム感覚で楽しめます。
「あと2個でコンプリート!」といった目標が生まれ、登山に興味を持ち続けやすくなります。

山頂郵便局で手紙を出そう

富士山頂には期間限定で営業する「富士山頂郵便局」があります。
ここから手紙や絵はがきを出せば、「日本一高い場所からの郵便物」として特別な思い出になります。
親から子へ、子どもから祖父母へ、登頂の記念として手紙を出すのもおすすめです。達成感や誇りを感じられ、自信にもつながります。
子どものやる気は、ほんの少しのきっかけで上下します。楽しい仕掛けと前向きな声かけで、富士登山を親子で最高の思い出に変えましょう。

登りと下りの違い:ペース配分とトイレ事情

富士登山では「登りが大変」「山頂がゴール」と思われがちですが、実際には下山にも体力と集中力が必要です。特に子ども連れの場合は、登りと下りの違いを理解した上でのペース配分やトイレ管理が、安全な登山成功のカギを握ります。

登り:体力と気力を温存しながら慎重に

登りは基本的に息が上がりやすく、疲労が蓄積しやすい行程です。特に五合目から六合目、七合目までは標高の変化が急で、ペース配分を誤ると後半にバテてしまいます。
また、登りの途中では山小屋の位置を目安に区切って休憩や食事を取りながら進むのがおすすめです。
・歩き始めは「物足りないくらい」のゆっくりなペースで歩くのがちょうどいい。
・10〜15分歩いたら5分休憩、を基本にリズムを作る。
・のどが渇く前にこまめに水分補給。子どもには「お水タイム」を合図に。

下り:スピードより「膝と足裏のダメージ」に注意

下りは登りよりもラクに見えますが、実は足腰への負担が大きく、事故が起こりやすい行程でもあります。子どもはバランスを崩しやすく、転倒や滑落のリスクもあるため注意しましょう。
・歩幅を狭くし、一歩一歩確実に踏みしめるように歩く。
・砂利や火山灰が積もる道は滑りやすいので慎重に。
・ストック(トレッキングポール)を活用すると膝への負担を軽減できる。
・下山を急がず、休憩ポイントでしっかり脚をほぐす時間を確保。

トイレ事情:子どもと一緒に計画的に動こう

富士山の登山道にはところどころにトイレがありますが、距離が長く、数も限られています。子どもは急にトイレに行きたがることが多いため、事前にトイレのタイミングと場所の確認が必須です。
また、混雑時には並ぶこともあるため、登山開始前に五合目で済ませることも重要です。
登りと下りでは体の使い方も注意点も異なります。とくに子連れの場合は、ペースを一定に保ち、トイレや休憩をしっかり管理することで、安全で快適な富士登山を実現できます。
・トイレは有料(200〜300円程度)で、利用時は小銭の準備が必要。
・トイレの場所は登山前にルートマップで把握しておくと安心。
・「行ける時に行く」が基本。我慢させず、こまめに誘導を。

ガイド付きツアーを利用する:子連れ登山ならではのサポート

子連れでの富士登山では、体調管理やルート選び、緊急対応など気を配るポイントが多く、親だけで全てをカバーするのは大きな負担です。
そこで検討したいのが、登山ガイドやガイド付きツアーの利用です。
特に初めての富士登山であれば、ガイドは心強い味方になってくれます。ここでは、子ども連れ登山におけるガイド利用のメリットを具体的に紹介します。

ペース管理と体調チェックをサポートしてくれる

経験豊富なガイドは、登山中のペースを見ながら「このくらいで休もう」「今は頑張って進もう」といった的確な判断をサポートしてくれます。
子どもの顔色や様子を見て、高山病や体調不良の兆候に早めに気づいて対応してくれるのも安心材料です。

迷わず安全なルート選択ができる

富士山はルートが複雑で、霧や悪天候で道がわかりにくくなることも。
特に下山時に道を間違える人も多いため、ガイドがいれば迷うことなく安心して進めます。
また、休憩場所やトイレのタイミング、山小屋との連携も含めて、全体のスケジュール管理をしてくれる点も大きなメリットです。

子どものモチベーション維持に協力してくれる

登山中、子どもが疲れたり飽きたりした時にも、ガイドが声かけや小さな工夫でやる気を引き出してくれることがあります。以下のような前向きな声かけで、親だけでは難しい場面も支えてくれる存在です。
・「もう少しであの山小屋だよ!」
・「この先で○○が見えるよ!」
・「山頂に行ったらスタンプ押せるよ!」

万が一のトラブル時も冷静に対応

登山中のケガや体調不良、急な天候の変化など予期せぬトラブルが発生したときに、適切な判断と行動をとってくれるのがプロのガイドです。
特に子どもがいると、親は不安で冷静さを欠きやすくなりますが、ガイドがいれば心強いサポートになります。

ツアー形式なら、装備レンタルや移動手配も一括で安心

ガイド付きの登山ツアーには、トレッキングシューズやレインウェアなどのレンタルがセットになっているプランもあります。
バス移動や山小屋予約、保険加入などの細かい準備が一括で任せられるのも、忙しい親にとっては大きなメリットです。
富士登山を安全に、そして親子で心から楽しむために、プロのサポートを受けるという選択肢は非常に有効です。

もしもの時の下山判断:安全に富士登山するための準備

富士登山は、天候や体調など想定外のトラブルが起こりやすい山です。特に子連れの場合は、登頂にこだわりすぎることで子どもの健康や安全を脅かすリスクがあります。
そこで大切なのが「下山の判断基準を事前に決めておく」ことです。勇気ある下山は、登山の成功と同じくらい価値のある決断です。

「登頂よりも無事に帰る」が鉄則

親としては「せっかく来たのだから登らせたい」という気持ちは自然ですが、子どもの体調や様子に異変があれば、迷わず引き返す勇気を持つことが最優先です。
富士登山の目的は「山頂に立つこと」ではなく、家族全員が安全に帰宅することです。

下山すべきタイミングとは?

以下のような状況になったら、無理せず下山を検討しましょう。親の直感も大切で、「いつもと違う」「ちょっと変だな」と思ったら、迷わず安全優先の判断が必要です。
・子どもが強い頭痛・吐き気・寒気・倦怠感など高山病の症状を訴えたとき
・天気が悪化し、強風・雷・豪雨・濃霧などの危険があるとき
・子どもが明らかに歩きたがらない、泣く、眠そう、反応が鈍いといった状態のとき
・登山予定時間を大きくオーバーし、山小屋到着時間や下山時間に影響が出るとき

安全に下山するために必要な準備とは?

・天気予報を事前にチェックし、登山中も定期的に確認する→五合目や山小屋に掲示あり
・行動食や水分、防寒具を余分に持っておく→下山が遅れたときにも備えられる
・万が一に備え、山小屋やガイド、周囲の登山者とのコミュニケーションをとっておく
・下山ルート(来た道を戻る、下山道へ分岐するポイントなど)を事前に把握しておく

下山は「失敗」ではなく「判断力の証」

「下山=失敗」と思ってしまう方もいますが、本当に大切なのは命を守ること。特に子連れ富士登山では、早めの判断が子どもの健康や家族の安全を守ります。
下山後に「また来ようね」と笑って言えることこそが、最高の富士登山成功体験です。

親子で富士山登山を楽しむためのポイントまとめ

子どもと一緒に富士山に登ることは、親子でしか味わえない達成感と感動を共有できる、かけがえのない体験です。しかし同時に、標高3,776mの富士登山には、年齢や体力、装備、安全対策といった様々な準備が求められます。
親がしっかり準備し、子どもの気持ちに寄り添いながら一歩ずつ登れば、富士登山は家族にとって一生忘れられない思い出になります。
無理をしない。焦らない。挑戦すること自体が、すでに素晴らしい経験ですので、「また登りたいね」と笑顔で言い合える、そんな富士山登山を家族みんなで叶えてください。

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富士山パーキング

富士山パーキング

富士登山シーズンのマイカー規制期間中、富士山五合目へ向かうシャトルバスに乗り換えるための大型駐車場です。オフシーズンには、富士山を望む芝生広場で様々なイベントや催し が開催されます。

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ライター紹介

富士観光開発(株)